薬剤師 転職を呼び出そう!
たんこぶを一つつくったら、次はそのたんこぶ一つ分、賢くなっていく。
そうやって失敗を重ねることが人間としての大きな成長につながるのだと思います。
私は一九七七年入社で、入社直後の配属は鉄鋼貿易でした。
当時は鉄鋼の輸出が会社の収益を支えており、自分も汗をかいて結果を出さなければならなかった。
現在のように輸出入取引と並行して、事業投資も積極的に進めるような時代とは違っていました。
担当はラインパイプ部門。
私の仕事は毎日、雑誌や新聞、専門誌を読んで鉄鋼や輸出に関する情報を収集し、海外に出張させてもらって現地で調査する。
そうやって世界地図に描いたラインパイプの絵を実現させていくことでした。
最初に大きな仕事に配属されたのは、商社の仕事を知るうえで大変ラッキーでした。
たとえば、入社三年目で取り組んだ北海のプロジェクトでは、現場が北海ともなると、パイプを日本から運ぶだけで二ヶ月、つくるのに三ヶ月かかります。
ところが、その間にプロジェクトの都合で設計が変わってしまうことがある。
そうなると受注しても、日本の鉄鋼メーカーは混乱してしまい、「どうするんだ?」ということになる。
そこで、日本のメーカーだけでは埓が明かない、とロンドンに飛びました。
ドイツなど欧州のメーカーとの組み合わせでやろうと考えたわけです。
すると日本のメーカーからーカーでというように分けてはどうか」との提案がありました。
とりあえず、日本のメーカーも同行願って、ロンドンで入札準備の会議をすることにしました。
まずは技術打ち合わせです。
日本のメーカーは「これができて、これができない」、ドイツメーカーは「これはできるけど、これはできない」と率直に意見交換。
そして双方が納得いく分担で提案書を作成しました。
その後、お互いのメーカーに、いくらならできるかを聞いて、プロジェクトの入札価格を決めました。
それから入札です。
実際は他社よりうちの提示金額は高かった。
けれども、受注できたんですね。
災害や事故などの危険リスクに対し、コンティンジェンシー(不測の事態を想定した対応策)を入れておいたからでした。
仕事はそこで終わったわけではなく、日独連合で品質を高めようと、品質保証マニュアル、管理マニュアルなどをつくっていきました。
入社三年目の私にとっては、研修時の教科書やマニュアルがまったく通用しない世界でした。
実際、為替ではドイツマルクとの差損で大変な目にも遭いました。
あらゆるリスクを想定しなければならず、それを「すべて自分で考えながらやれ」と言われていた。
上司は危なっかしいと思ったときにだけ出てくる。
でも、自信がつきました。
日独の大メーカーに対し、きちんとモノを言い、リーダーシップをとってプロジェクトをまとめることができたからです。
雑賀大介人事総務部長はゆったりと語る。
一九八六年からスカンジナビアM社でノルウェーとフィンランドに合計七年間駐在した。
そこでも石油プロジェクトに参画し、受注から工事の発注などを担当した。
その問、時間に余裕がある時には「いろんなことに興味をもって首を突っ込んだ」とのこと。
そんな仕事の中には、担当事業とはまったく畑違いの宝飾品の取引もあった。
ノルウェー駐在時代には鉄鋼製品だけではなく、宝飾品や水産物などのまったく違う商品も担当しました。
いまでは業務の効率や、組織の責任分担などで、まったく違う分野の商品を自由に担当させてもらうことはなかなか難しいかもしれません。
私の場合、本業で十分な成果を出していたこと、部店独立採算制だったことから、実現したという事情もあったのだと思います。
ただ、本来のM社のビジネスのありかた、あるいは人材育成の視点からすれば、それも一つのあるべき姿だったのかもしれません。
未知の世界で将来広がるかもしれないビジネスに挑戦する。
その姿勢は、まさにM社が歴史のなかで培ってきたものだからです。
創業から当社にある気風は「挑戦と創造」です。
あるきっかけに対して、「こういうこともできるんじゃないか」という好奇心と想像力をもつ。
また逆に、「ここまでやったらヤバイかもしれない」と臆病になる。
そういう二つの気持ちを忘れずに商売に結びつけていく。
それが大事だと思うんです。
人が最大のアセット(財産)なのです。
その「人」という言葉に秘められている意味はどこにあるのかと言えば、信頼感だと思うのです。
M社という法人はあるけれど、実際に仕事をするのは、そこに属している社員という個人。
だから、採用に際しては、最終的"には「あいつに仕事を任せたらきっちりやってくれる」と深く信頼できる人を求めます。
M社には、エントリーで一万人くらいの応募かおりますが、みんな“地頭”もよく、優秀な学生が多い。
でも、優秀というだけの理由では採用しません。
それよりは、与えられたことをきっちりやりぬくガッツと責任感のほうを重視します。
また、あの人は信頼できる、あの人なら逃げない、あの人は失敗を人のせいにしない、できないことはできないと言うそういう価値観のほうが採用の決め手になると思います。
面接の際、どんな話をするかは決まっていません。
志望動機などは書類ですでに書いてあり、それを尋ねれば学生も用意してきた答えを話すでしょう。
でも、あまり意味があるとは思えません。
いまの学生がかわいそうだなと思うのは、情報が過剰であるがゆえに、あるいは勉強ができるがゆえに、「この質問に対して、どういう答えをすれば良いのだろう……」と先回りして考えてしまうことです。
たとえば、「あなたにとって働くということは何か?」と尋ねると、「自分が企業で働いて良い仕事をすることで社会貢献したい」と答えます。
しかし、M社が使っている「良い仕事」という言葉は、過去の不祥事に対する深い反省と教訓があったからこそ社内で初めてうまれた言葉であって、まだ学生の皆さんが、その言葉を心底理解しているとは思えません。
ストレートに自分の考えを述べれば良いのです。
面接担当者としては、普通の会話がしたいだけなのです。
面接担当者として面白いと感じるのは、自分の言葉で喋って会話が成り立つ人です。
一日に二〇人も面談するとなると、具体性のある会話を通じてしかコミュニケーションが成立しません。
就職活動に真剣になるあまり、就職すること自体にゴールを置いているようなタイプでは、なかなかそういう会話ができない。
だから、そうした姿勢を崩すために、こちらも変わった質問をすることがあります。
たとえば、今年最終面接では、「あなたはモテますか?」という質問を投げ掛けてみました。
最終面接でそんなことを聞かれると思っていませんから、みんな「九つ?」という顔をします。
そこで「モテる」と答えたほうが良いのか、「モテない」と答えたほうが良いのか、瞬時に激しく悩み出します。
こちらからすれば、答えはどっちでも良いわけです。
そこで話し合いたいのは、商売をしていくうえで人に好かれることは大事だということ。
つまり、商売をやっていく上で、商品の優位性、価格、サービスの質の高さといった個々の項目よりも、その人がお客さまから好かれるかどうかというのは、圧倒的なアドバンテージなのです。
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